世論調査と政党支持 2章 松本正生
新聞社が過去において、「政治度」や「革新率」を層化基準にしていたというのは面白い。でも都市度などと相関が高そうでどれほど意味があったのだろうかとも思う。
郵送などにくらべて面接調査のほうが回答状況が統一されている議論しているが、個別の調査員の影響を考える米国では、この議論は通用しないだろう。
面白いのは、郵送法などでは「相互に関連を持つ連続的な質問やSQを用いる濾過式質問の効果が損なわれる危険がある」と述べているところ。これはQuestion Order effectといって、米国ではいかにこれを取り除くかに主眼が置かれているわけで、これを利用するというアイディアはない。
層化や2段階抽出の場合は分散の推定は経験則を下に推定しているとあるが本当だろうか。僕は読んだ事無いが、宮野1986に林知己夫1984に書いてあると引用されている。無論、Kish 1965をみてもCochran 1977にもPPSという章でこの分散の推定は書いてある。
また、付録に引用してある朝日新聞社の1976の標本誤差早見表はどうも、分散を過大評価しているように見える。僕の計算によるとdeff=7.8で、単純無作為抽出のデザインに対して分散が7.8倍になっている。標準誤差の評価はコンスタントにどこでもsqrt(7.8)=2.79倍になっている。これは原本を見てみないとなんとも言えないが。層化のデザインでそれはありえない。
また、ここで議論されている誤差の妥当性の議論は良く分からない。項目ごとに異なる分散の推定が出来ないとあるが、項目ごとにsample element varianceが計算できてそれを元に母集団の分散が推定されるのだから、項目ごとの推定は可能である。また誤差の分布については、少なくとも平均値のような(当然比率も含む)推定では中心極限定理により、誤差項の正規近似に問題があるとは思えない。
選挙時の過大報告についてはレビューが中心であり取り立て新しい事は無い。調査から落ちた分も分母に入れる絶対投票率が比較的ましな指標だという事だが、それでは選挙研究に使う調査では使えないのである。
統計数理研究所が、選挙人名簿と住民基本台帳による標本抽出の比較をしていた事は知らなかった。この熱意には頭が下がる。
